真琴、ガンバルっ!

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「じゃあね、まこちゃん。私次教室別だから放課後ね!」 「うん、また後でね!ガンバロウねぇ」 美樹ちゃんに手を振り碧くん達とも別れ、一人でお目当ての教室へ向かいます。玉木さんと平井先生は、学校へ戻るなり二人でどこかへ行ってしまいました。個人ロッカーで準備を済ませ、廊下を進みます。 と、急にフローリングの床が色を変えます……いや、色を変えたと言うより見るからに汚れ方が「絵の具をぶちまけた」みたいに鮮やかな感じになりました。 そうです。わたしの専攻しているその勉強とは、絵画なのです。 由比学の持つ専門課程の科目数は尋常じゃありません。必須科目と選択科目で構成された受講科目、その選択科目の領域が桁違いなのです。 「人間……学ばなあかん事は、無限にあるさかい」 理事長の半ば趣味的なそんな言葉がこの領域の広さを実現しました。一生徒としては、選択の幅が広いに越したことはありません。 なんて事考えてるうちに、ドアの前に着きましたよ。 「……」 ドアに手をかけ過ぎる時間。この科目には要注意人物がいます。ニヒルな勘違い野郎が若干一名……いつも付きまとってきます。この前なんてすでに来ていたにもかかわらず、席を移動して隣にきました。 そぉっと……そぉっとドアをスライドさせます。 ……いました。教室真ん中の列、一番うしろに座ってます。取り敢えず、気付かれなければどうってコトないので、忍び足でドア入ったすぐの席に座りました。 そして授業開始のチャイムが鳴り現れたあの美人さん……彼女こそ、本科目の先生です。持ってきたカバンから教材を出していると、何かの気配がしました。 「んもぅ、真琴来たなら来たって言えよなぁ……いつもうしろの席だから取っておいたのに」 咄嗟に声のした左を見ると、いつのまにか要注意人物が移動してきていました。気付かなかったのは恐らく、一部の人達がざわついていたのと尚且つ、先生に気付かないうちに見とれていたせいでしょう。 いまわたしに出来る最善の防衛法は、無視することです。 「あれ?真琴飯食った?実は俺まだなんだよねぇ」 「……」 「これ終わったらさ、次の時間サボって飯食いに行かない?」 「……」 「ってかさ?今日夜空いてる?俺も空いてるからさ、時間合わせて遊ぼうぜ!」 「……すいませんが、授業に集中したいので別の席に移動してくれませんか?」 あぁ……思わず声を出してしまいました。最悪です。
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