真琴、ガンバルっ!

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ニヒルくんをガン無視し、そそくさと教室を後にします。少し寂しい鮮やかな廊下を進み、第二昇降口へ。色々な人の話し声が遠くに聞こえます。 とりあえず、美樹ちゃんにメールして待ちますか。 待っている間に個人ロッカーで帰り支度をしてると、職員用玄関から出てくる一人の制服を着た男性が視界の端に映りました。思わずドキッとするわたしの心臓は、否応無しに心搏数を上げていきます。 「い……石神くっん!?」 「へへぇ、まこちゃん遅くなった」 呟くわたしを後ろから抱き締めてくる美樹ちゃんは自棄に香水臭く、息がつまります。 しかし、わたしの視線は廊下を歩いていく石神くんに釘付けです。ぽっかり口を開けて、おそらく相当だらしない状況に陥ってしまいました。 「まこちゃんシカト?」 若干不機嫌そうな美樹ちゃんの声で我に返りました。 「え?全然!で、何の話だっけ?」 要らぬ緊張で、変に声が上ずってしまいます。すでに石神くんらしき男の子は廊下を曲がり、向こう側へ行ってしまいました。 「なんか……明らかにいつものまこちゃんじゃない。何かあった?」 「え?全然平気だよ!」 今ここで美樹ちゃんに石神くんらしき人がいた事を話すと、絶対面倒臭い事に発展するので今は伏せておきましょう。 心配をしてくれる美樹ちゃんに罪悪感を感じつつ帰り支度をすすめます。 「そう言えばねぇ」 後ろの美樹ちゃんはすでに支度を終えているのか、手に持ったカバンをぶらぶらさせながら顔を近付けてきました。 「今度の前期文化祭、他校との交流を深めるために3校合同でやるらしいよ」 動いていた手が止まり、少しばかりの沈黙が訪れます。 「……どういう事?…………もしかして、合同でやるその学校が?」 「っそう!石神くんのいる学校なのです!どう?ナイスな情報提供でしょ?これはもう情報料としてお昼の明太子パスタはチャラかな?」 そう言って笑う美樹ちゃんを眺め、頭の中を整理します。 今度行われる由衣学前期文化祭が、他校との合同で行われる事になり、その他校というのが石神くんのいる学校と…………じゃあやっぱりさっき見た男の子は石神くんで間違いないのかな? 完全に時間の止まったわたしに、美樹ちゃんは更なる情報を提供してきました。 「で、なんと今日!その調整をしに石神くんが来るんだって!どう?これはもう逆に、まこちゃんから何かしらのご褒美があってもいいくらいの話じゃない?」
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