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一通りリビングを物色した美樹ちゃんは、こちらからなんの言葉も発していないのにソファーへ腰掛けテレビを点けています。まぁそれはいいのですが、さっきから渚の姿が見当たりません。
美樹ちゃんの隣に座り改めて渚を探していると、洗面所から出てくる渚の姿が目に止まりました。
「なぁんだ」と思ったのも束の間、美樹ちゃんが立ち上がり「私もぉ」と渚の方へ近寄ります。と、その時。
「ひゃぁぁぁああぁあぁあ」
本日3度目になる美樹ちゃんのおたけびが部屋にこだましました。渚はもう慣れたのか、チラッと洗面所を覗き込むだけです。
わたしは頭フル回転で立体的に洗面所の状態を思い出そうと努力しました。その結果、コップに挿してある歯ブラシが危ないと思い出しました。
「どうしたの美樹ちゃん?」
心臓がうるさいくらいバクバクで、もはや声のトーンとか発しているのにワケ分からなくなってしまいます。
「まこちゃん、これもお父さんの?」
その手には、案の定歯ブラシが挿してあるコップがにぎられていました。
これは……さっきのお父さんネタで切り抜けられないかな……。
「あぁ、ソレもお父さんの忘れ物なんです」
「へぇ、でもまこちゃん……コレ、名前書いてあるよ?誠って……お父さんの名前が誠なのに娘にも真琴とかなくないかなぁ」
うわぁぁぁぁ!
万事休す、所詮わたしなんかにはコノ機密を隠し通せる力が無かったんだ。もういっそ全部話して楽になりたい。
そう思ったその時、またしても渚が助け船を出してくれました。
「あ、ごめん。ソレ私のなんだ。真琴の家には今もたまに泊まりに来てるからさぁ……え?誠?いやさ、私新撰組大好きでね、もう私の部屋なんか誠の字だらけだよ」
ファンタジスタ!渚もう返しが意味わからなすぎてファンタジスタです。
「そうだったそうだった……渚たまに泊まりにくるから歯ブラシ常備してあるんだよ」
乗っかれ!この流れに強引だけど乗っかれわたし……もう生きた心地がしません。
「そういえば、たまに斎藤さんとまこちゃん一緒に学校来るもんね」
コレは納得してくれたのかな?いやいや、美樹ちゃんの事だから油断はできないぞ。
渚はソファーにどっぷり座り、美樹ちゃんはそそくさと洗面所へ。
「ふぅ」と息を吐いたのも束の間!
「あ!そういえば!」
美樹ちゃんの声に条件反射で身構えてしまいます。
「な、なに?」
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