真琴、ガンバルっ!

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楽しい時間はあっという間、嫌な時間は長く感じるものです。この日わたしの心を支配したのは、結局前者でした。 「ごめんね、思ってたより長くお邪魔しちゃって」 「今度私も泊まりに来たいなぁ」 あれから、結局トランプを囲んで俗にいうガールズトークが盛り上がり、気付けば午後8時です。 「じゃね真琴!石神くん、真琴ならイチコロだよ!」 そう、そして美樹ちゃんの失言から石神くんの事が渚に知られてしまうという事故があって、 「誠くんか……まこちゃん、約束だよ!」 美樹ちゃんに誠を紹介するという、無理な約束を取り付けられた次第です。わたし達の話し声も、遠くに聞こえる人混みの声と共に空へ浮かんで消えていきます。 現在は美樹ちゃんが「電車の時間が」との事で駅へ向かっています。 解決しなきゃいけない問題。 まずは、玉木さんが言っていた国家危惧種認定者合同の研修旅行。なんかニヒルくんという、名前もあやふやな奴が危ない雰囲気でしたが、そこは玉木さんの結果待ちとなるでしょう。 次に……まぁ、こちらのほうが大問題ですが、美樹ちゃんに誠を紹介するという件。これは言わずもがな渚に最大限協力してもらって、なんとか乗り切るしかないですかね。 自分で解決できる力が欲しいと思ったばかりなのになんと他人任せな。 でも、今回は仕方ないですね。わたしが悪いんじゃない。仕方なかった、この言葉に尽きます。異論は認めません。 ぶつぶつ呟くわたしを見て、渚が伸びをしながら口を開きます。 「まぁ……さ!なんとかなるんじゃない?人生はね、自分の色を好きなように好きなだけ乗せていける、でっかいキャンパスなんだからさ!」 「ほぉぉ、渚さん……名言ですねぇ」 にっこり笑う渚に「臭くないですか?」とは言えず、ただ頷くだけです。 そうだよ、どう行動しようがその結果何が待っていようが、それがわたしの道。また其処で考え、最善の道を選んでいけばきっと、笑顔でいれるはず。長い人生、迷う時や悩んでしまう時なんて星の数ほど訪れる。 「……渚……ありがと」 自然と出た感謝の言葉に、優しく頭を撫でて答えてくれる渚。不思議な安堵感がわたしを支配していました。 「だからね、真琴」 「え?」 「ニヒルくん、ちゃんと考えてあげなね」 ……そういう事じゃねぇよ! 家でのトランプの際、うっかり出してしまった固有名詞に心の中で突っ込みを入れ、3人今日は別れたのでした。
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