勇者がヘタレなので一式の装備を初期から揃えさせておきたい

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スピーカーのスイッチを切り、満面の笑みで画面を見つめるイリア。 画面越しに見るジャックの住む町には動揺が走っていた。 混乱、あるいは混沌。そんな空気が町を襲っているようだ。 その状況を見て満足したイリアはミーナへと弁当を届けるため、牢獄へと向かった。 「イリア・グレイパール!俺は、お前を絶対に倒す!」 そして、ジャックはその混乱を鎮めんとばかりに監視カメラに向かって指を差し、大声で言い放つ。 しかし、そんな言葉も虚しく、牢獄に向かったイリアの耳には全く入っていなかった。 「今日の朝御飯は何?」 「和食なら右手、洋食なら左手を……って、枷が付いてたか……」 一旦床に弁当の入った袋を置き、首にかけていた鍵を手枷に差し込み、拘束を解除する。 「和食のほうを下さい。今日はそんな気分です」 「はいはーい」 床に置いた袋を持ち上げ、袋の中から和食の弁当を取り出す。 「500エクスねぇ。また親御さんに連絡しておきますからぁ」 「あ、魔王さま!ちょっと待ってください!」 弁当を渡し、帰ろうとしたイリアを制止するミーナ。 「何ですかぁ?」 その呼び掛けに応え、イリアは振り向く。 「あの、その……いつも、ありがとう……ございます」 イリアは何に対して感謝をされているのかが直ぐに分かった。 「それくらいで魔王さまの器を計ってはいけませんよぉ?私は、『ごくあくひどー』なんですからっ♪」 そう言ってイリアは牢獄を後にした。 その姿を見て、ミーナはくすり、と笑っていた。 弁当を包むラップには『和食Aセット 700EX』と書いてあった。
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