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「ひよっこに身は任せられぬ。傲慢もほどほどにしろ」
答えは否定だった。当たり前といえば当たり前だろうか。
「テンプレ通りのぺらぺらな言葉じゃあ、大物は釣れませんよぉ。
まだ経験も浅いんだから、出直しなさいっ!ってことで」
この魔王さまはとんでもないメタ発言をたまにするが、それでも正しいことには正しい。
ありきたりな言葉では人に一定以上の感情を伝えることは難しいのだ。
「……しかし、だ。お前が魔王を倒すには荷が重すぎると私は見た。
先ほども言ったが、私に剣を委ねてみる気はないか?少しお前は軽すぎる」
「軽い……ですか」
本人も薄々自覚はしていただろうが、ジャック・ハルベルトという人間が勇者になる動機や、勇者になることについての意識は異常に軽かった。
お金と名声欲しさに勇者になることを決意し、自ら立候補したジャック。
しかし、その浅はかな決意は逆手に取られ、双方の陰謀によって彼は勇者となった。
勇者となることが決まってからは遊びほうけ、村の人間に事有る毎に自分が勇者となることを自慢していた。
それに怒った幼馴染みマリアは魔王さまに密かに会いに行き、自分を幽閉してくれるようにと頼んだのだ。つまるところ、『狂言誘拐』というものだ。
それでいくらかはやる気にはなったものの、向上しようとする兆しは全く見えなかった。
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