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「い、いや、今から、行きます……よ……?」
そう言いながらもガタガタ震えて動く様子はない。
そこでマリアはゆっくりとジャックに向かって歩き始めた。
最早ジャックにとって歩く恐怖となったマリアは一歩、また一歩と近づいていく。
ジャックは後ろに下がるも、マリアはそれを越えるスピードで前進する。
刹那、スピードを急速に上昇させ接近するマリア。
それに微動さえ出来ないジャックを空いている左手で軽く押した。
呆気なくジャックは倒れ、そのままマリアにマウントポジションを奪われる。
そしてマリアはジャックの首から数ミリしか離れていない地面に自分の剣を突き刺した。
「……せめて抵抗ぐらいはしてくれ。勇者がこんなにも弱くては魔王に笑われるぞ?」
実際にはもう笑われている。時既に遅し。
「いや、俺少し怖がりなんですよ……」
「嘘はいけない。少しじゃなくて、かなり、だろう?」
ニヤリと笑い、顔を接近させるマリア。
ジャックは既に見透かされていた。見透かせない人間がいたら見てみたいものだが、ヘタレたる所以はここにある。
「私の家に来い。暫く面倒を見てやろう。お前のようなヘタレを見ていると、世話が焼きたくなる」
地面から剣を抜き、マウントポジションから解放する。
茫然とするジャックをよそに、マリアはまた閑散とした町の中を歩いていくのだった。
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