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やがて、二人はマリア宅に到着し、その中へと入っていった。
その行動を見たイリアは困っていた。
今まで小型の追跡型カメラでジャックを追っていたのだが、部屋の中には入れない。
しかもマリアという自分が頼んでもいない人間が出てきたので余計だ。何をされるかが予想できないというのが大きな痛手だろう。
「お仕事が増えたのか減ったのか……よく分からない展開になりましたねぇ~。
とりあえず、出来るだけの監視はするべきかなぁ?」
出来るだけカメラのマイクをマリア宅に近付かせ、少しでも多くの情報を得ようとするイリア。
「…………しかし、私の仮の名というのは――」
マリアの声だった。幾分小さな声だったが、壁を通しているので仕方がないということだろう。
「ではどのような――」
それに続きジャックの声が聞こえる。しかし壁のせいで少しでも声量が小さくなると聞こえなくなる。
「………………グレイパール…………ハルベルト………」
イリアは自分の苗字を呼ばれたことに驚く。ジャックの苗字も一緒に呼ばれたのがイリアには一層の謎だった。
「……メリー・ハルベルト」
そして、イリアを更なる混乱に落とし込む一言。
少なくとも『メリー・ハルベルト』という人間が存在しないのだ。
ジャックの身内は既に調査済みで有るというのに、隠し子がジャックの両親にはいたのだろうか。
「分かんない……展開が急すぎて訳がわかんないよぉ!」
無人の管理棟に、とある魔王さまの叫びが木霊した。
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