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イリアは苛々としていた。
というのも、奇妙なことになかなかマリア宅から出てこないのだ。
しかもマリアが監視カメラに気付き、カメラを追い払ってしまったので音声を聞くことさえも出来なくなってしまった。
「暇ですねぇ……」
遠方から監視するも、やはり出てこない。一時間ほど見張っていたが、ついにイリアの我慢が限界を越えた。
「あーもう!何よあのマリアとか言う女!私の計画台無しだよぉっ!」
そんな叫びがこだまする中、誰かが管理棟の中へと入ってくる音が聞こえた。
「そんなはしたない声を出していると、魔王さまとしての格が下がりますよ、お母様」
イリアがその声に反応し、後ろを振り向く。
薄い紫のロングヘアーに、鋭い目付きをした小さな女の子。
ズルズルとひきずっているブカブカの茶色いコートに身を包み、イリアに忠告をするこの少女。
この少女が『メグ・グレイパール』、イリアの実の娘である。
「メグ!?いつ帰って来たの?」
「さっき。上手く魔王さまやってる?」
「まぁねー。ちょっと計算狂ったけど、私の野望通りかなぁ?」
イリアがメグと会ったのは数ヶ月ぶりのことだった。
メグは以前、『私は勇者側につく!』と言ってそれきり家を出てしまい、しばらく連絡をとっていなかったのだ。所謂家出である。
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