勇者が弱すぎる故に魔王さまは手助けをしたくなる

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「そ、それはどういう意味で……」 「まずは落ち着け。私のほうまでハラハラしそうになるではないか」 落ち着きのないジャックをマリアは咎め、それによってジャックは冷静さを取り戻す。 「……落ち着いたな?」 「え、ああ、まぁ」 少々ジャックは困惑しているようだが、気にする様子もなく話を続ける。 「簡単な事だ、強くなるには実践を積めばいい」 マリアの回答はごく普通の、素っ気ないものだった。それに対しジャックはもっと奇想天外な答えを求めていたのだろうか、またもや拍子抜けした顔をしていた。 「何を気の抜けた顔をしている、私に異議があるというのか?」 自信ありげな表情でジャックをみつめるマリア。マリアの目は子供を苛めるかのような、サドっ気を含んだ目をしていた。 「い、いえ……ないです……」 一方ジャックはマリアに半ば強制的に頷かされた。ここで頷かなければ自らの身に何かが起こるのかは想像に易い。 怯えながらも頷いたジャックに満足したのか、表情を変えてにこりと笑い、 「私が基礎からみっちり教えてやろう。魔王には私も少しうんざりしているからな」 と言って、マリアは台所へと向かって部屋を出た。
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