勇者が弱すぎる故に魔王さまは手助けをしたくなる

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その頃、グレイパール城。 「……話が分からないよぅ…………」 イリアは監視カメラでの観察を諦め、間に諜謀役を挟むことにした。 機械の動作音のような音でも感づいてしまうような人間が向こうにはいるのだ、これでは熟練の偵察者(オラクル)を送る他、ジャックを監視する方法はない。 偵察者を待つイリアが右手でペン回しをして暇を潰しているところに電話の着信音が鳴り響く。 イリアはそれを素早く開き、何やら奇妙なコードを二、三本ほど接続してから通話ボタンを押した。 「はいはーい、こちら魔王イリア・グレイパールですぅ」 『イリア様、こちら第C-2部隊です』 どうやら電話の相手は偵察を依頼していた部隊の部隊長のようだ。 部隊長はそのまま事務的な感じでイリアに事情を伝えていく。 『勇者ジャックがいると思われる家の盗聴に成功致しました。今からその一部始終を纏めますので、よくお聞きください』 「流石ですぅ!!では報告をお願いしまーすっ」 興奮混じりのイリアに、部隊長はしっかりとした口調で答える。 『はっ。この中にいる人間はジャック以外に女性が一名、計二人でございます。そしてその女性はジャックに特訓を促しておりますが、本人は乗り気ではないようです』 「……え、それだけ?」 しかし、部隊長の報告に期待していたのか、イリアは心底がっかりしたような声で返答した。 『急なお呼びでしたもので、数分前に着いたのですよ。しかしイリア様が「早急に連絡を寄越せ」とのことでしたので……』 「あ…………」 本来、C-2部隊はこの村から十数キロのところにある洞窟に待機していた部隊である。 しかし、イリアのお呼びとあればエンヤコラ、例え眠りに就いていようとも、どれだけ遠くにいようとも即座に行動に移さなければならない。 それに加え、部隊というものは複数人で行動するのが基本なので、それによって行動速度も遅れるのだ。 イリアはそれを考えていなかったが故に、たった五分しかマリアの家に偵察者を張り付かせていなかったのだ。
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