勇者が弱すぎる故に魔王さまは手助けをしたくなる

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「あともう少し張り付いておいてくださぁい。情報はできるだけ早く、無理はしないでくださいねぇ」 『はっ、それでは通信を切ります。ご武運をお祈り申し上げます』 「私からもお祈り申し上げますわぁ♪」 そして、数秒の空白の後、イリアは電話の電源ボタンを一回押し、通話を終了した。 「…………つまんない」 そして二言目にはこの言葉だ。 つい30分前からこの言葉を少なくともイリアは20回は言っている。 「もー、ぐずぐずしてるの大っ嫌い!何!?あー、イライラするっ!!」 机に置いてあるバスケットの中にある、色とりどりの果物の中からバナナを一本取り出し、皮をむいて食べ始め――るかと思われた。 「れろっ…………ちゅぱっ、…………あむっ、じゅるっ、…………ちゅうううっ!」 いきなりイリアはバナナを舐め回したり、口でくわえて吸ってみたり、と明らかに食べる以外の目的があるかのようにしゃぶる。 「…………っはぁ……。普通に食べよ」 結局は自分の唾液でベタベタになってしまったバナナをかじり、数秒もしない間に完食していた。 「本物が、恋しいですねぇ」 そんなことを呟きながら、イリアは再び机に戻り、業務を再開した。 管理棟はパソコンのキーボードを打つ音と、様々な数値の変化を知らせるアラート音のみが木霊し、イリアも真剣に仕事をしている様子が見てとれる。 ――結局、その日の昼には怠けていた分の仕事を全て終わらせ、少々余裕ができるまでに資料が片付いていた。
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