勇者がヘタレなので一式の装備を初期から揃えさせておきたい

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~グレイパール城・城門~ 門の前に突如、魔方陣が現れる。 それに二人の門番は驚き、臨戦体制をとるが、イリアのものだと分かるとすぐに元の姿勢へと戻っていた。 「お帰りなさいませ、イリア様」 「只今帰りました~っ」 門番は深々とイリアに頭を下げる。それに対してイリアは左手を挙げ『ご苦労さま~っ、今日も一日頑張りましょうっ!』と言って門を過ぎ去るのだった。 そして肩で息をしながらも自分が作った城の中で散々迷い、ようやく管理棟まで辿り着いた。 「も、もうダメ……」 椅子に浅く座り、もたれる。しばらくするうちに体の位置がずれていき、遂には腰掛けの部分に頭を打ち付けてしまっていた。 それによってイリアの眠りかけていた脳が再び覚醒し、意識を取り戻したイリアはディスプレイを慌てて見始めた。 「少し町から出る様子ではなさそうな……ヘタレーっ!ジャックのヘタレー!」 そんなことを言っていると、ジャックはいきなりカメラ目線になり、ディスプレイ越しにジャックとイリアが対面する形になる。 「あっ、マイク切るの忘れてたぁっ!」 ジャックを監視するカメラにはイリアの言葉を出来るだけ早く伝えるため、スピーカーがついている。 しかし、何かの拍子に普段切っているはずのスイッチが今に限って入っていた、ということだ。 「この際言っておく、私の名前はイリア・グレイパール。この世界を支配する魔王さまだ!ジャック、ミーナを返してほしくばさっさと私のところまで来なさいっ!以上、魔王さまからのお知らせでした~っ」 やや間抜けなお知らせだったが、イリアは言いたいことが言えたので満足している様子だった。
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