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「………はぁー…なぁーんも、やる気が起きねぇや…」
真弘が机に肘を付きながらダルそうに呟く。
「ならば、拓磨みたいにクロスワードでもしてみたらどうだ…?」
本を片手に祐一が少し笑いながら言った…。
「頭動かすのは却下だな…」
そしてまた、机に寝る体勢に入る。
「……しかし…静かだな…」
教室の窓の外に広がる世界に目を遣りながら祐一が呟いた言葉だった……。
「…………だから暇なんだよ…」
真弘がつまらなさそうに小さく吐き捨てた──。
昼休みはいつもと変わらず皆は屋上に───居るのだが…あと、もう一人。
「いい天気ですね…」
「そう……だな…」
笑顔で話す慎司とは対照的に、少し遠慮気味の秋の姿があった。
それを見た真弘は静かに祐一を壁際に引っ張って行き………
「おいおい…祐一どういう事だよこりゃ…なんで、あいつが居るんだ?」
「……大蛇さんに出来るだけ目を離さない方がいいだろうと言われてな…」
「はぁ?!そういう事は先に言っとけよ?!」
「………すまない。そんなに気にしないものだと思っていたんだが…」
「気にするに決まってんだろがぁあ!!」
祐一の言葉についつい大きい声を出してしまい他の皆の注目を浴びてしまう…。
「…………何やってんだ……あの人達は…」
「気にしなくていいと思うよ?いつもの事だから」
秋の問い掛けにも笑顔のまま表情を変えない慎司はフォロー役に打ってつけだった。
「…………まったく…煩いったらねぇよな…」
クロスワードに目をしたまま呆れた感じに珠紀に話し掛ける拓磨。
「……………………」
「…おい、聞いて………………。」
無言の珠紀を気にして振り返ったが…珠紀は黙って秋の様子を伺っていた…。
(なんつーか……最近変だよな……こいつ…)
拓磨もチラリと秋の様子を盗み見る。
そして──
「そう言えば…狗谷先輩の姿を見掛けませんけど、どうかしたんですか?」
「……あ?灰色頭なら、またどっか、ふらついてんじゃねぇーのか?」
「………狗谷…?」
秋の食い付きに空気が沈黙に変わる────。
「え……と、狗谷先輩は色々と悪さをしている先輩なんだけど……」
「……まぁ、狗谷は簡単に言えば放浪犬……みたいな感じか?」
慎司が戸惑いながらする説明にニヤリと笑い真弘が付け足した。
「…………放浪犬……」
その例えがおかしかったのか、クスリと笑い出す秋。
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