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宇賀谷家───。
「……はい。はい。はい。…分かりました。では、珠紀様とご一緒に伺わせて頂きますね。では……後程。」
チンッと音を立てて受話器を元の場所に直し
早速、珠紀が居る珠紀の自室へと美鶴は向かった──。
「ねぇ……美鶴ちゃん、これから何処に行くの?」
何も聞かされず、ただ、出掛けるから付いてきてほしいと美鶴に言われ付いて来ただけの珠紀は少し戸惑っていた。
「大丈夫ですよ。珠紀様もご存知の場所ですから」
ふわりと笑い珠紀を安心させるかの様に優しく答えながら足を進め─
一軒の家の前で足を止めた。
「ここは………」
珠紀の言葉の途中に引き戸が開かれ
「お待ちしておりました。さあ、お入りください」
ここの亭主の大蛇さんが優しく微笑み中にへと招き入れた途端─
『パァアアァンッ!』
と、勢いよくクラッカーの音を鳴り響き渡らせ
「よく来たな!待ってたぜ!」
「ちょっと、真弘先輩!タイミング早すぎたんじゃないんですか?」
「まぁ…もう鳴らしてしまったのだから、今更言っても仕方ないだろ…。諦めろ、慎司。」
「…………っ、うるせぇ…ったらねーぜ…」
「…………完全に俺の計画、無視されてるし…」
「ど、どうしたの?これ?!」
突然のことで、まだ理解が出来ない状態に珠紀は問い。
「あぁ……驚いたか?ほら、お前最近、元気なかっただろ?だから少しでも元気になったらなっ……てよ…」
最後の方は恥ずかしくて頭を掻きながら、俺が答えてやると…。
「私…………の…為?」
珠紀は薄く目に涙を浮かべていた。
でも…
「おやおや、こんな所で立ち話もなんでしょう…。お茶を用意してきますので、皆さんは居間に居てもらえますか?」
いつもと変わらない大蛇さんの笑顔で、皆は居間にへと移動することになった。
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