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居間に着いた時に
珠紀が入り口付近で立ち止まり
「私の為に有難うございます」
と、ペコリと頭を下げ
礼を言ってきた。
礼が言われたいからしたんじゃない……
俺はただ────
「んなこと気にすんなって、取り敢えず今日はいっぱい楽しめよ。」
そう言って軽く肩を叩いてやってから
適当な場所に腰を落ち着かせた。
祐一先輩や真弘先輩…
他の皆も珠紀の笑顔を見て
安心したような顔付きで
頷いたり、笑い返したりしていた。
トランプをしたり、他愛ない話をしたり、騒いだり…
皆で楽しい夕食も終わらせて
腹もいっぱいになり
遊び疲れた真弘先輩は大の字になりながら
周りのことは気にせずに寝だすし…
祐一先輩も壁に凭れて
目を瞑っている…いや、
あれもたぶん寝ているのだろう………。
狗谷は一人、縁側に座り
月を見上げていて…
慎司と大蛇さんと珠紀と美鶴は
テーブルを囲みながら
楽しそうに雑談をしていた。
学校で最近見ることの無かった
珠紀の笑顔を今日は
多く見れて、俺はただ、純粋に嬉しかった。
そんな時
皆と少し離れた場所で
外を眺めてた俺は
ふと黒宗 秋のことを思い出していた──。
そして、あの時の
珠紀のことも────。
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