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* * *
「じゃあ、まず、おれはー」
「キャッ」
一瞬、子犬が鳴いたのかと思った。
すぐ側のトイレからだったような気がする。
まさかと見回すが、方向的にも距離的にも目ぼしい場所は、そこしかない。
A二棟の寂れた男子用トイレ。
上靴が擦れる音が中から重なって聞こえ、疑惑は確信になった。
ふたりは顔を見合わせる。
「このトイレってもう使えんのじゃなかったっけ……」 無二が指さした。
「使用禁止の札、掛かってるし」
市橋がビニールテープをでたらめに張り巡らせた入り口を指差す。
だが、その奥には確かに人の気配がある。
「「……え?」」 同時に頭を傾けた。
次には無二を上段に重なって中を覗く。
男ふたりの地味なトーテムポールだ。
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