2月13日・朝

9/13
前へ
/56ページ
次へ
「ちょーっといいっかなあ、メガネくん」 いつの間にか、無二が女子生徒を庇うように立っている。 「どんな理由があるのか知らんっけどねぇ、女の子に暴力はダメじゃないっかなあ?」 慌てて飛び出した市橋は、闇雲に無二の腕を引っ張った。 「ちょ! 無二!」 彼を叱咤しながら、男のほうを見て、 女のほうへ返し、また男のほうを見て、 無骨な作り笑いで頭を下げる。 制服が軋むほど引きずって、どうにか推移を試みた。 強固に踏ん張る無二を蹴飛ばし、 男のほうへへつらって、 くず折れた女のほうを見、 ばつを悪くして、 また無二を引っ張る。 無二の威勢は衰えるどころか盛っていた。 目の色が変わる。 平坦になっていく。 市橋の喘ぐような訴えは悶絶に変わった。 「聞こえてるっかなあ? 女の子傷つけてなにしてるっかなあ?」
/56ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加