2月12日・深夜

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「……だって、ゆいい、どうしても渡したいものがあるんだもん」 唯一は泣き出しそうな顔になる。 「おれに?」 「違う」 「だれに? つうか、それならなんでおれに言う?」  「ムニが手伝ってくんないとで~き~な~い~」 唯一は手足をばたつかせて駄々をこねる。 「なんで?」 「えー? だってぇ、はるくん、ムニと同じ西高の人だしぃ」 唯一は上目使いに甘える。 「知らんし!」 そっぽを向いた途端に、 下腹あたりで違和感を感じた。  ドッと汗が湧く。 恐る恐る目を向けて、怖気が走った。 ジャージを貫かんとするばかりにめり込む鋭角金属。 「ハサミっ?!」 裁縫用の大げさなハサミだ。 戦慄した。 眼前で超然と唯一が笑っている。 「知らんしとか知らんし♪」 焦点の合わない目がじわじわと迫る。 危険な色だ。 「あのねー、ゆいい、はるくんにチョコあげたいの~、ムニー、協力してくれっかなあ? 教えてくれるだけでいいんだっけどなあ」 腹が痛かった。 ハサミはえぐるように捩込まれている。 「協力してくれっかなあ?」 脅迫だ。 「…………………します」
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