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「……だって、ゆいい、どうしても渡したいものがあるんだもん」
唯一は泣き出しそうな顔になる。
「おれに?」
「違う」
「だれに? つうか、それならなんでおれに言う?」
「ムニが手伝ってくんないとで~き~な~い~」
唯一は手足をばたつかせて駄々をこねる。
「なんで?」
「えー? だってぇ、はるくん、ムニと同じ西高の人だしぃ」
唯一は上目使いに甘える。
「知らんし!」
そっぽを向いた途端に、
下腹あたりで違和感を感じた。
ドッと汗が湧く。
恐る恐る目を向けて、怖気が走った。
ジャージを貫かんとするばかりにめり込む鋭角金属。
「ハサミっ?!」
裁縫用の大げさなハサミだ。
戦慄した。
眼前で超然と唯一が笑っている。
「知らんしとか知らんし♪」
焦点の合わない目がじわじわと迫る。
危険な色だ。
「あのねー、ゆいい、はるくんにチョコあげたいの~、ムニー、協力してくれっかなあ? 教えてくれるだけでいいんだっけどなあ」
腹が痛かった。
ハサミはえぐるように捩込まれている。
「協力してくれっかなあ?」 脅迫だ。
「…………………します」
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