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悪党を三人まとめて縛り上げ、業物であろう刀剣だけ頂戴して、役所に突き出した。
報奨金が雀の涙ほど出た。
騒ぎを大きくしてしまった店には戻れまい。
役人のてこ入れも始まっているはずだ。
今の腐った役人共は、小遣い稼ぎにばかり躍起する。
耳郎が表情に影を落とした。
周儀はおやと思う。
しかし聞くことは憚られた。
それよりも得体の知れない救世主の存在に、興味津津だった。
店にいられなくなった詫びとして、耳郎が自宅に招待すると言った。
「この寒い夜は子供たちには厳しいでしょう。赤子など命に関わります。幸い私の家も近い。どうです、そこで夜を明かされては」
「非常にありがたい申し出なのですが、なにぶん我ら流浪の身。役人に目をつけられるやもしれませぬぞ」
「それを言うなら、ほれ、ここの二人は流浪です」
そう言って巨漢の二人を指した。
二人はがははと大口を開けて笑っている。
周儀は釣られて小さく笑んだ。
耳郎の家宅に、馬もくるめて世話になることにした。
耳郎の人となりを、傍人の巨漢たちの笑顔がよく示していた。
鳥は悪党の首を挙げられなかったことを悔やみ、爪を噛んでいた。
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