六浪僻地をゆく

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大丈夫かと張飛が手を伸ばすと、鳥の背負っている荷物から何かが飛び出した。 張飛が伸ばした手を慌てて引っ込める。 ばさばさという羽ばたきが部屋にこだました。 鷹。 鷹が部屋を飛び回っている。 燈が閃と叫んだ。 鷹が旋回し、燈の肩に留まった。 「なんでえそいつは」 「この娘の愛鷹です。いや、怪我がなくて良かった。頼りになる仲間なのですが、幾分気性も荒くて」 周儀の言葉に、張飛がふむと唸った。 まだ幼い鳥を手助けする、誰よりも頼りになる仲間であった。 そのまま燈に撫でられ、落ち着き、張飛を敵でないと認めた。 周儀の膝で気持ち良さげに眠る鳥をよそに、劉備が名を問うた。 「申し遅れた。私は周儀、周延明です。この小さいのが雷鳥、雛姫と呼んでおります。あちらの、大きい方の少年が雷燈。小さい方が雷示です」 劉備に向かって二人が会釈した。 「そしてこの後ろにいるのが、これ、出てきなさい」 周儀に命じられ、娘が顔を覗かせる。 こちらが雷雅ですと付け加えた。 劉備は改めて五人に向き直り、劉玄徳だと名乗った。 暴力から出会ったものの、清廉潔白なのだなあと周儀は素直に思った。  
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