六浪僻地をゆく

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官僚の空席が目立つという話が都で大きくなった。 青天の下、曹操が曹幹から知らせを受ける。 黄巾の乱が始まってから早五年。 ようやく張宝が討たれ、乱も一区切りがついた。 だが、宗教とは人の心に巣食うもので、それは力で制圧したところで消えるものではない。 むしろ、指導者を失った太平道がどう化けるか、誰にもわからない。 手痛いしっぺ返しになる、という気がする。 黄巾の乱が竜巻だとすれば、もっと激しく、嵐のような、大地を併呑する事態に陥るのではないか。 杞憂ではない、と曹操は考えていた。 目の前にあるのは、宗教の扱い方を朝廷が間違えた、という事実。 そして悪政を取り締まらなかったばかりに、人の心に宗教の入り込む隙を作ってしまった。 今の朝廷はそれらを理解していないのだ。 理解していないからこそ、このような大規模な叛乱が起きたとも言えるのだが。 曹操は郷里である陳留郡で力を蓄えていた。 しかし悟られぬように。 袁紹を睨んでいた。 高級官職を多数輩出した名門家に生まれ、またその実力も非凡である。 兵を動かそうとすれば、十万は超えるだろうと言われる雄だ。 曹操は袁紹に細心の注意を払っていた。 今はまだ対峙する時ではない。 捻り潰されるだけだ。
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