六浪僻地をゆく

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曹幹が今後の動向を問うた。 「官僚の空席は、宦官に消されているからだろうよ。力をつけ過ぎた、宦官は」 「宦官ゆえに、でしょう。賄賂を払わぬ者はすべからく排斥される。もとは罪人が、立派になったものです」 「幹、それは俺の祖父もなのだぞ」 「それなら、私の叔父もそうです」 曹操は苦笑した。 曹操と曹幹は従兄弟同士であり、ともに宦官の家系に生まれた背景があった。 宦官には性器がないので、あくまで養子に過ぎぬのだが、曹操は宦官という存在に人一倍敏感だった。 だから、宦官の暴挙は耳が痛くなる。 「宦官の話以外になにか」 「では嬉しくない知らせをもう一つ」 曹操に耳打ちした。 目を見開く。 曹幹の情報に相違があったことはない。 十分理解している。 しかしながら、思わずまことかと問うた。 曹幹は神妙な面持ちで、深く、深く、肯いた。 「そうか。これはいよいよだな」 曹操は青天を見上げた。 雲が一つだけあった。 あれが俺かと呟いた。 否。 曹操は太陽に手を伸ばした。 ただ浮きだって消え行くなど、ありえぬ。 この小さな躰で、燦燦たる輝きを放つ太陽を覆い隠して見せる。 俺ならできる。 この曹孟徳ならば、必ずや成し遂げられる。 曹幹が持ち込んだ話とは、帝が危篤状態で、近々逝去するだろうというものだった。 これから待つ激動の時代を前に、空は依然白い歯を見せて笑んでいた。
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