524人が本棚に入れています
本棚に追加
予州にある山のひとつに、雷一族という隠れた一族が存在していた。
黄巾党の戦火が各地を包み、中央では次第に官軍が優位になり、虐殺が始まりつつあった。
予州では張宝(チョウホウ)が潁川(エイセン)に拠(ヨ)って信者を指揮し、黄巾党の賊徒は略奪を繰り返していた。
雷一族は平穏に暮らしていた。
その平穏は、父と母の死という形で、呆気なく崩壊する。
雷一族、とはいっても十数名の小さな村だが、略奪の限りを尽くされていた。
父の弟子として共に住んでいた周儀(シュウギ)が命からがら黄巾党の賊徒から息子たちを守り通し、山を下りて逃げ出した。
生き残ったのは、息子が二人と、娘が三人。
そのうち一人はまだ赤ん坊だった。
周儀は涙を飲み、子供らを連れて乱世へと身を投じてゆく。
戦乱に巻き込まれた、悲しき忌み子たちの物語だった。
最初のコメントを投稿しよう!