六浪僻地をゆく

2/15
前へ
/207ページ
次へ
雪が降る。 寒さも佳境を迎える河北。 解池(カイチ)から流される闇塩を運ぶ馬車がひとつある。 遼東半島から山東半島へ裏経路で流される塩も多く、岩塩から精製されるそれらの純度は決して良くない。 塩は高級品で、滅多なことでは用いられない。 漢朝が塩の輸出入を取り決めていた。 しかし塩は高価で運びやすいため、密売の裏経路が盛んであった。 内陸での最大の塩産地は解池であり、今回の荷はそこから流される闇塩であった。 そもそも、闇塩を送らせているのは政府の役人である。 白い息がのぼる。 荷を運ぶすぐ横で、頭巾を被る女子がぎゅっと腕を組む。 肌は白く、年は九、十の娘だった。 背丈も小柄で、狐白裘(コハクキュウ/狐の脇の下の白い毛で作った防寒着)を着ているのだが、むしろ狐白裘が覆い被さっているような印象を受けた。 唯一狐白裘から覗かせている右手には身の丈よりもはるかに大きい戟が見え、腰には刀を挿していた。 背には大きな荷もある。
/207ページ

最初のコメントを投稿しよう!

524人が本棚に入れています
本棚に追加