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周儀が酒を飲み終える頃には四人の皿に肉はなかった。
だが腹は満たされていないようで、特に鳥が物足りぬ様子で坐していた。
あの大きな戟を持ち歩く少女だ。
育ち盛りの女子である。
やれやれと周儀は苦笑し、酒瓶を机に置き、店主を呼ぼうと立ち上がった。
かちんと目が合う。
不精髭の目立つ悪党である。
見せびらかすための腰の刀が物語っている。
背丈も八尺はあろう。
並の者なら身ぐるみを差し出し逃げ帰る。
そんな者が三人いる。
周儀を睨みつけている。
周儀は視線に気づきながらも無視した。
相手にするほど、暇ではない。
四人が視線に気づく。
悪党たちを睨み返す。
周儀が止めた。
争いは、弱者が繰り広げるのだと諭した。
四人はその一言で途端に口を閉ざしてしまった。
「よお、何を見てるんだい」
悪党の一人が絡む。
得意げに刀をちらつかせている。
鳥はいまだ腰に備えている刀に手を伸ばした。
たった三歩で斬りかかれる。
おかしな振る舞いをした瞬間、首を薙いでやろうと考えていた。
その目はいつも以上に真っ赤に染まっていた。
「特に何も、見ておりませぬ」
「嘘を吐くんじゃあねえぞ。こっちを睨んだじゃねえか」
騒ぎ立てる。
喧騒。
騒ぎが広がり店内が騒然となった。
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