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都心から離れた緑地の中に、小高い丘がある。
その丘には公園があり、休日は子供達が賑やかに遊んでいる。
だが、公園の奥に、展望台があることはあまり知られていない。
そしてそこに、1本の桜の木があることは、あまり知られていない。
この桜は少し変わっていて、毎年真冬の12月に花を咲かせる。
「狂い咲き」といって、気候や土地の関係で、本来咲くはずのない季節に咲いてしまうのだ。
冬に咲く桜は、季節外れではあるものの、趣があって美しく、満開の時は、それは見事なものだった。
だが、どんなに美しく咲いても、誰にも知られないこの桜は、毎年1人で咲いては、儚く散っていた。
しかし、この桜の存在を知る者が、2人だけいた。
1人はもう、この場所に来ることはないが、もう1人は、毎日と言っていいほど、足繁くこの場所に通っていた。
その人物の名は、上原咲。現在高校2年生。
そして来年の春、桜がスッカリ散る頃には3年生になる。
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