第1話

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 HR前の騒がしい教室の中、私は1人、窓際の自分の席から、校庭の桜の木を眺めていた。    今は、冬の寒さも本格的になりつつある、11月末。当然、こんな時期に咲いているわけもなく、桜は、寒々しい枯れ木姿で、校庭に立っていた。   ―あの丘の桜は、例年通りなら、そろそろ蕾をつける頃だな…    そんなことをボーっと考えていると、ポンと肩を軽く叩かれ、 「咲!おはよ!」 と、いつもの明るい声が響いた。 「おはよう、華音。」  元気よく挨拶してきたのは、私の幼なじみで親友の、湘雲寺華音(ショウウンジカノン)だ。  華音とは3歳の時、幼稚園で知り合い、仲良くなった。小学校は学区が違うから別々になってしまい、会わなくなってしまったけど、中学で同じクラスになったのをキッカケにまた仲良くなり、高校もこの私立校に一緒に通っている。  華音は湘雲寺財閥という、大きな財閥の一人娘で、ゆくゆくはお父さんの会社を受け継ぎ、財閥を背負って立つ存在になる。
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