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「まだ、これから、だ」
全身が麻痺していて上手く体を動かせない。だからと言って寝ているとアンリと二人揃って狩られる側になってしまう。麻痺した体に鞭打って、神機を杖に立ち上がるとヴァジュラはこちらを振り返る。よし、アンリを標的にしていない。
「それでいい」
もう一度自分の大きな神機を構え直して、まだ距離があるヴァジュラを見据える。ヴァジュラは再び突進すべく加速を始めた。
「…まずは、体制を崩す」
ヴァジュラの突進が自分に当たる寸前で右にステップすると同時にヴァジュラの脚に神機で斬りつける。見事に成功し、ヴァジュラは体制を崩して雪の上に転がる。
「チャンスッ!!」
神機を倒れているヴァジュラに容赦なく何度も振り下ろす。飛び散る鮮血、響き渡るヴァジュラの雄叫びと荒神細胞を断ち切る鈍い音。それでもまだ、ヴァジュラは生に執着しているのか、落雷と共に起き上がった。僕の体は雷撃が直撃し、まるで紙のように吹き飛ばされ、崩れかけの建物に衝突。建物は崩れ、瓦礫の下敷きになる。それにより、体の身動きは取れない。
「一人で…やってみせるんじゃ…無かったのか」
薄れゆく意識の中で脚を引きづるヴァジュラの姿が見えた。命の危険を感じたのか、僕らに背を向けて雪の向こうに消える。まさか、荒神が見逃すなんて。
「--!」
夢かもしれない。僕を見下ろすように見つめる、雪のように真っ白な少女が居た。髪も、僕に差し出された手も真っ白で。そこで僕の意識は途絶え、彼女の手を握ることは出来なかった。
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