序:別れ

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続いて聞こえてきたのは多くの人々の悲鳴だった。僕とヴァンは顔を見合わせると直ぐ様孤児院に走った。なんだか嫌な予感がしたのだ。 結果から言えば嫌な予感は的中していた。曲がり角を曲がって目に飛び込んできたのは燃え盛る炎に飲み込まれた孤児院や回りの家々、そして逃げ惑う沢山の人々だった。ガスタンクを積んだトラックが事故を起こし、回りを巻き込んで炎上したのだ。 僕らはショックのあまり手に持っていた夕食入りの紙袋を地面に落とした。呆然と立ち尽くす僕らは、次の瞬間、逃げてきた人の波に飲み込まれた。 「「うわっ!」」 ほぼ同時に上がった声。しかし僕とヴァンはあっという間に離ればなれになった。僕は人々に押され、あまりの苦しさに気を失ってしまった。 次に目を覚ました時、僕は見知らぬ夫婦のいる家のベッドの上だった。道で倒れていた僕を助けてくれたらしい。 2人からは色々な事を聞いた。ハートフィア孤児院は全焼したこと、生存者は見つかっていないこと、そして最後に「うちの子になりなさい」といわれた。行く宛のない僕はその好意をありがたく受け取った。 僕は次の日、2人と共にヴァンを探し町中を歩きまわった。……しかし、ヴァンの事はどれだけ探しても見つけることが出来なかった。
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