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僕は、布団に馬乗りになり、僕の顔があった場所へと5cmの距離まで近づいてきていたその綺麗な顔を反射的に吹き飛ばした。グーで。
放物線を描き綺麗に吹っ飛んだその人影の事を気遣う事も無く、布団からバッと起き上がると、肉食獣に襲われた野生動物の如くに周囲を警戒しながら部屋の隅に移動し、冷たい汗を背中にかきつつその人影を睨みつける。
「お、お前! 朝から僕に何しようとしてたこの変態!!」
僕が睨んだ視線の先にいた人物は、数秒間動かなくなった人形の様に倒れていたが、やがて何事も無かった様に立ち上がり、僕に微笑みかける。
「フッ……朝から過激な愛情表現ですね。おはようございます御常君」
そう言った人物――――セミロングの黒髪に、眼鏡をかけ、女性的というよりは中性的、可愛いというよりは美しいといった容姿を持つ人物は、僕――『唯野御常(ただのみつね)』に対してクールな微笑を浮かべたまま、朝の挨拶なんていう洒落た事を行った。
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