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送信完了を確認し、鞄を担いで研究室を出た時だった。
ドンッ
「うわっ!?」
「きゃっ!」
出合い頭に誰かとぶつかってしまった。
相手が抱えていたファイルから大量の資料が床にバサバサと舞い落ちる。
大河はすぐに資料を拾い集めた。
「すみません!」
「いえ、こちらこそ…いきなり飛び出てすみません。」
相手は白衣を着ている女性だった。
長い髪で顔は伺えないが、隣の研究室に所属している人だろう。集めた資料を当人に渡す。
「どうぞ。」
「ありがとうございます。」
その瞬間。
相手の顔を見た。
…息を呑んだ。
「本当すみません。」
「…あ、い…いえ…。」
…ユリと瓜二つだったのだ。
とっさに相手の名札を見遣る。名札には、近藤侑理(ユウリ)と書いてあった。
「それじゃ、私はこれで…失礼しました。」
「あ、ちょ…」
近藤侑理は足早に去っていった。
残された大河は、その場に呆然と立ち尽くす。
今の、近藤侑理は何者だ?
ユリとそっくりなのは偶然だろうか?
偶然にしては…似過ぎている。ユリのディティールはどうやって構成されたんだ?
モデルが、居たのか?
だが…ユリが作られたのは少なくとも10年前。
今の近藤侑理は見た所、大河とそれほど歳が変わらないように感じた。
ということは、当時彼女は10歳。当時から今のような顔立ちだったとは思えない。
ならば…?
ブーッブーッ
ふと、思考を遮ったのはポケットで震えた携帯だった。
慌てながら携帯を取り出すと、ユリからのメール着信だった。
From:ユリ
Sub:Re;ごめん
*本文*
待ちくたびれたよーぅ。早く帰って来てー(ρω;)
いつの間に顔文字なんて覚えたんだろうか。
近藤侑理のことは、また本人に聞いてみればいい。
大河は再び家路を急ぐ。
ユリが待っている。
「…帰らなきゃ。」
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