セクション9

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 しかし、連行してきた刑務官たちの緊張は解けない。この先にも、難所が待ち受けているのだ。  リフトの揺れがほとんど収まってきたころ、タクマは、腰のあたりが浮くような感覚を得た。ベルトでロックされていなければ、そのまま漂いだしそうな勢いだ。  (なるほど…そういうことか…)  タクマは、刑務官の方をちらりと見やって思った。そして、一緒に移送されている4人の受刑者を見る。  異変には明らかに感じているようだが、ここでも、パニックを起こすような者はいない。肝の据わった奴らだと、タクマは思う。  宇宙空間では、上も下もない。しかし、リフトの外では、微かなモーター音と、ガタン、ガタンという音がする。  ほどなくして、再び下に重力が戻って来るのを感じた。コロニーの回転慣性による疑似重力ではあるのだが。  リフトのゴンドラが、コロニーの回転と同期し、出口へ接続されるまで数分。ようやくタクマたちは、リフトから解放された。  ベルトを外され、数十メートルはありそうな通路を通り、エントランスホールと思しき広場まで出て、ようやく手錠と腰縄が外された。  そしてそのまま処遇本部の建物へと向かった。
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