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ここで、別のリフトに乗っていた4人も合流し、2列縦隊で処遇本部へと向かう。どうやら、全員何のトラブルもなかったようだ。
それにしても、奇妙な場所だった。巨大な茶筒の内側に建物がへばりついている感じだ。歩く場所は平らなところが多く、ところどころ角度がついている。そして、円筒の内に合わせて反っているところもある。
コロニーの回転運動による遠心力で、疑似重力を得ているのだが、そう説明されないと、解らないくらい実感はない。
ほどなくして、処遇本部、第1指導室へ通される。そして、第1処遇主任の訓示。
移送前の拘置所で訓示、モルジブの地上ベースで訓示、そしてまたここで訓示と、なにかあると訓示である。タクマは、うんざりした。
もっとも、ここでは今後の予定と、部屋の割り当てに伴なう注意点を述べたにとどまったが。
「…というわけで、週が明けたら、この刑務所でのルール所作、集団行動訓練なんかを行う新入教育をする。それまで、…君たちは懲役なんだが、実はまだ昼夜独居でさせる作業がない。」
第1処遇主任が説明すると、移送者たちは、困惑の色を浮かべる。
「まあ、何日か暇になるかもしれんが、これも刑の一部だと思ってくれ。テレビは見られないが、新聞と本は読んでいいからな。以上、訓示は終わりだ。各人、それぞれの房で、お待ちかねの昼飯だからな」
そして、独居房の並ぶ居住区へと連行される。ここで、9人の移送者たちは、数人が別のエリアへと分けられた。そして、新入者用の房へ通された。
カクカクした通路を通ったある一室。『E-16』の表示。ここが、タクマの居室となる独居房であった。
扉は、東京拘置所と比べてやや重い感じが薄い。ただ、食器孔と扉の視察窓がやや大きい気がする。
刑務官立会いの下、荷物を引きずって入室。室内は、入ってすぐに小さな三和土があり、板と畳の三畳敷き、奥にはトイレと洗面所。奥にある窓の向こうは、建物の外が少しだけ見える。
一見、拘置所とあまり変わらない作りではあった。しかし、最大の特徴は、床から天井に向かって、壁がやや狭くなっていた。ちょうど台形の箱に入った感じである。
入室して外から房の鍵が締められる。昼食は、小机に用意されてあったが、すっかり冷めていた。
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