セクション9

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 入浴が終わり、タクマは再び居室へと戻った。刑務官の指示で、夕食まで自由時間が許された。とはいえ、独居房の中でのことだが。  とりあえず読書をする。宇宙空間というきわめて限定された場所では、持てる本の量もかなり限られてくるだろう。特に、購入するたびに蓄積しやすい雑誌などは、計画的に買う必要がありそうだ。  タクマは、斜めになっている壁に固定されている私物棚をちらりと見やりながら、思った。  ほどなくして夕食。そして点検。  東京拘置所であれば、窓からわずかに見える景色で時間の経過が多少はわかるが、ここでは窓の外の景色はほとんど変わりがない。時折刑務官や受刑者が通り過ぎるだけである。  点検終了後、ラジオ番組が流れた。テレビ視聴が認められないうちは、こうしてラジオ番組が居室に流れる。  日本から遠く離れていても、ラジオはちゃんと日本の放送局のものが流れた。  そのとき、刑務官がタクマの居室の前で止まった。  「モリだったけか。ラジオ番組は、いくつかチャンネルがあるから、モニターのスイッチで切り替えてな、聴きたくなければ、報知器で知らせてくれ。それから、仮就寝は、6時に号令をかけるから」  それだけ言って立ち去った。タクマにとって、この刑務官が、ジロー・ナカセだったということは、後で知ることになる。  6時。ジローが通路で仮就寝の号令をかけた。タクマは布団を敷く。この宇宙時代にあって、畳に布団とは、いかにも日本らしいな…と思いながらも。  ただ、日本以外の受刑者が入る居室は、ベッドになっていた。そこも、モニターや机の高さ以外は、他の居室と大きな違いはなかったが。  9時には就寝時間となる。このとき、居室の電燈が間接照明に切り替わり、ラジオの放送が止まる。
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