セクション9

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 翌日。この日は木曜日。新入教育訓練までこの日を入れてまだ4日ある。  朝食後、タクマがいるエリアのどこかで出房の号令がかかっている。これから新入教育に向かう受刑者らしい。  行進の足音が遠ざかってまもなく、ジローが来て、  「来週の月曜までとりあえずやることがないんで、食事と点検以外は好きにしていいぞ。ただ、あまり不体裁なことはするなよ」  とだけ言って立ち去った。  地上の刑務所であれば、昼夜独居の作業といえば、封筒貼りというのが、なぜか日本の刑務所の伝統として残っていた。(もっともすべての刑務所というわけでもなかったが)  とりあえずすることもないので読書にとりかかる。しばらくして、タクマは出房を命じられた。  通路に数人の受刑者が並んでいる。点呼を取り、連行された場所は建物に囲まれた中庭のような場所だった。  「これから、30分間の運動を許可する。くれぐれも、中庭以外の場所には出ないように。それから、爪切りを使用したい者は申し出ろ」  刑務官はそれだけ言って建物の入り口付近に2人で陣取った。3人の受刑者が爪切りを借りに行った。
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