セクション9

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 タクマはゆっくりと中庭を歩きながら様子を見た。今運動しているのは8人。その中に、移送のとき見た顔も3人いる。前日入浴が一緒だった者もいた。  おそらく次週の新入教育では一緒に受けることになるのだろう。  さすがにお互い警戒しているのか、会話をする者もいない。ただ、黙々と中庭を歩きまわるだけだった。  「別に話をしていてもかまわないんだぞ~」  立会いの刑務官が声をかけた。しかし、動きはない。刑務官は、それ以上は何も言わなかった。  30分後、運動終了の号令がかかった。整列してまた独居房へ戻る。  居室に戻ってしばらくして、昼食になった。  その後、タクマはふと思うところあって、報知器を押した。すぐにジローがやってきた。  「どうした?」  「ちょっと、手紙を書きたいのですが、発信はできますか?」  タクマは、家族に手紙を送ろうと思っていた。  「あー、新入教育で手紙の発信についてやるから、それまで待ってくれ。緊急のことなのか?」  ジローは、あまり表情を変えずに訊いた。  「いえ、急ぎではないです。ただ、どうなってるか訊きたかっただけなので」  「そうか。ああ、ちなみに手紙は基本的にメール発信になるぞ。こういう場所だからな」  「すいません、お手数かけます」  ジローは、軽く手を挙げて立ち去った。  その後は、入浴がないだけで、いつもと変わらない日が過ぎただけだった。  次の日、午前運動、午後入浴。土日は運動も入浴もない。ただ平日と違ってラジオが午前9時からになったくらいだ。  そして週が明けて月曜日、新入教育が始まった。
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