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「いいかげんにしろ!」
宮島は思わず手を上げた。
極短い時間、彼の手は妻の頬に接触し、妻はその衝撃で不自然に体をひねると、そばにあった鏡台の角に頭を打ちつけて倒れ込み、そのままの姿勢で動かなくなった。
部屋の中が静寂に包まれた。
宮島の頭の中には耳鳴りが鳴り響き、まるで夏の午後の蝉時雨のように反響し始めた。
「お、おい…」
ピクリとも動かない妻の様子にただならぬものを感じ、宮島は妻のそばに駆け寄ると、その体を揺り動かそうとして思わず手を強張らせた。
「ち、血が!」
妻のこめかみのあたりから、鮮やかな朱色の糸が一筋ツゥー…と流れた。
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