かりそめの家族

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《オカアサン・オカアサン・オカアサ・・・》   最大音量で語尾が割れる、しかし純はいつまでも赤いボタンを押し続けた。   「純!」   いたたまれずにリエが駆け寄ってこの幸薄い少年を抱きしめた。   「ひいぃぃぃぃー!」   純はリエの胸に顔を埋め、悲鳴のように泣いた。狂ったようにむしゃぶりついて泣いた。   「純!純!」   リエは純と共に泣き、悲しみの淵を共にさ迷い、そして呪う。   つましく必死に生きた人々の命を奪い去る社会の不条理を。   一迅の風が墓地に湧き起こり、純の慟哭を空高く舞い上げた。   宮島は墓石の前に立ちつくし、少年の悲しみをじっと見つめていたが、やがて意を決して言った。   「さあ、行くぞ…」   しかし純もリエもその場を動こうとはしない。   二人の気持ちは痛切なまでに宮島にはわかる、しかし時は止まることはないのだ。   純を、そしてリエを、悲しみの時の狭間に留め置くことは出来ない。   悲しみの共有は宮島とて同じなのだ。   (俺も最愛の者を…)   宮島は悪しきあの時を思い出す。   そのことが自分を純に巡り会わせ、リエに巡り会わせ、そして今自分はここにいる。   しかし、どんなに辛く悲しみが深かろうと、時の狭間に留まることは出来ないのだ。   今は胸が張り裂けそうな悲しみでもいつかは思い出という安住の地を得る。   その為に終わり無き明日という日を迎えるのだ。
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