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リエの反応は冷静であった。
「でも…ごめんね、私、お父さんのこと…ほんの少し疑ってた…」
「疑うもなにも!俺は自分の手で!」
「待って!お父さん時々真剣にテレビや新聞のニュース見てたでしょ?それに……」
「それに?」
「お金…たくさん持ってた…」
「ああ、確かに、しかしそれは…」
宮島は金は自分のものだったと言おうとしたが、リエはそれを制して続けた。
「でもテレビや新聞では一言もお父さんのことは出てなかった…」
宮島が逃亡中最も気に掛かっていたことであったが、リエの言うとおりであった。
そしてリエは決意の表情で宮島を正面から見つめ、言い放った。
「だからきっと奥さんは死んでない!」
「な!?」
「だって東京でしょ?五日も経ってるんでしょ?変だよ!お父さんきっと勘違いしてる!」
「リエ…」
宮島を見つめるリエの目に涙が溢れる。
「お父さん…これ…」
リエは携帯電話をポケットから取り出すと宮島に差し出して言った。
「家に電話して!きっと奥さんが出るよ!お父さんのこと心配してるよ!だから…」
差し出された電話を前に、宮島の手は震えた。
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