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「そうだな、ひと休みするか」
宮島は言うと、引越しの荷物の片付いていない畳の上に腰を下ろした。
「お疲れ様、ごめんね、せっかくの日曜日なのに引越しの手伝いさせてしまって…」
リエは自分も缶コーヒーを開けると宮島と向かい合って座った。
宮島はコーヒーをひと口飲み、ポケットからタバコを取り出して、リエに『灰皿はないか?』と言った。
「何言ってんの!?私未成年の女の子だよ?灰皿なんて持ってるわけないわよ?」
そう言いながらリエは空になったコーヒーの空き缶を宮島に渡して言った。
「これでいい?」
「あ、すまんな、言われてみればそのとおりだ」
宮島は笑いながら空き缶を受け取り、タバコに火を点けると紫煙をくゆらした。
その様子を見ながらリエは感慨深げに言った。
「お父さんて本当においしそうにタバコ吸うのね、家のお父さんみたい…」
「そうか?そうだったな…リエのお父さんもタバコ好きだったな…」
一年前のあの旅で、リエが自分の家族のことを話してくれたことを宮島は思い出した。
「リエのお父さんといえば、俺のところに電話があったときは驚いたぞ?娘が東京の大学に行くのでよろしくって」
それはリエが上京する少し前のことであった。
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