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受験に合格してリエの上京が決まったのは二週間前であった。
「ホント、あっという間だった…上京まで」
リエがため息をついて言った。
あの旅で、リエは自らの幸せを知ると同時に世の中には助けを必要とする人々の存在があり、自分がその一助になれる可能性があることも知った。
そしてリエは自らの指針に福祉の道を選んだのだ。
「もうあれから一年になるのか…」
宮島は感慨深げに呟いた。
「あ!そうだ!お父さん?純はどうしてる?元気にしてる?」
リエが突然思い出したように言った。
あの旅が終わったとき、宮島は東京に帰り、純は身寄りがいなくなったため児童施設に預けられることになった。
東京に帰った宮島は、妻の京子に純のことを話した。
京子は純の話を聞くと、意外にも宮島に、純を自分達のところに引き取れないものかと提案した。
宮島の話を聞き、京子もまた純に対して運命的なものを感じたのだろう。
自分が弾みで気を失ったことから端を発した、宮島が逃亡の途上で出会った薄幸の少年は、宮島との間に子供を設けられなかった自分もまた、宮島と共に純に出会うべき運命であったのではないか?と感じた上での提案であった。
宮島夫婦は純を自分達の元へ引き取るべく、ある人物を介して行動を起こした。
その人物とは、あの事件を直接解決させるきっかけを演じた山形新報社会部の記者、佐々木昭隆であった。
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