43人が本棚に入れています
本棚に追加
宮島は京子と話し合い、純を養子に迎えるべくその旨を山形新報の佐々木に相談し、佐々木は県の保護関係部所に例の事件解決のいきさつを話した上で、宮島が純を養子に迎えたい旨を申し出ていることを告げた。
しかし県は一時その件に難色を示した。
純が身体障害者であることと、渦中の事件の当事者であったこと、そして例の施設が県の認可下で運営されていたことで、関係部所の係が当事者同士の接触を敬遠したからである。
佐々木は県が面子のために宮島の申し出を断るのは職権の乱用だと訴え、子供の将来の幸せを奪う権利は官には無いと憤り、この件を紙上に公表すると半ば強行に話をその上部部所のトップに交渉した。
佐々木は宮島達と別れたときの純の顔を忘れたことはなかった。
純は宮島とリエの乗った車が遠ざかるのを、見えなくなるまでじっと見つめていた。
そして車が見えなくなると、付き添っていた佐々木に縋って振り絞るような悲しい声で泣いたのだ。
わずか数日の間行動を共にした宮島とリエは、純にとっては母のいないこの世で掛け替えの無い存在だったのだ。
この薄幸の少年のために、佐々木は自分が何をしてやれるのか?と思った矢先の宮島の相談であった。
佐々木の訴えが効を奏したのは、佐々木が関係部所のトップに交渉して四日後であった。
最初のコメントを投稿しよう!