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佐々木の訴えを伝え聞いた市長が仲介を申し出て、宮島の申し出を関係各部署に指示し、保護局の関係者と家庭裁判所前を通じて市長自身が純の後見人となり、事態は急展開に宮島夫妻と純との養子縁組が実現したのであった。
宮島が純と別れてから三ヶ月後のことである。
市長はあの事件の解決後、純と宮島の関係は全く知らなかったし、解決は報道関係の介入によるものと思っていた。
しかし、佐々木を通して純に対し、養子縁組を申し出ている宮島の存在を知り、個人的に佐々木と会見した結果、宮島達が事件解決のために果たした役割と純を保護した経緯を知るに及び、あらためてその貢献の大きさを知ったのだ。
そして純が今なお宮島を慕っていることを聞くに及び、何が最善の方法であるかをつぶさに判断したのだ。
あの薄幸の少年を幸せに出来ずに何の行政であるのかと、市長自ら純の後見人をかって出たのである。
そして純は四ヶ月ぶりに宮島と再会、一緒に純を迎えに 来た京子は、純を一目見るなり駆け寄って抱きしめ、大粒の涙をはらはと流して力いっぱい抱きしめたのだった。
初めて会った感覚は京子にはなかった。
京子は腕の中に純がいることが極自然のように感じられ、出会うことが、抱きしめていることが、定められた運命であると感じたのであった。
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