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  とりあえず下駄箱で立ち話もなんだということで、教室に向かうことにした。 「教室は二階かぁ……去年三階だったから一階分楽になったね」 「部室の方が酷くないか」 最上階だもんね。 にしても、美琴ちゃんは去年四階だったから……それが今年は三組だから一階か。 だいぶ楽になったもんだ。ちょっと羨ましい。 「部室棟への渡り廊下は二階にもあるし、部活行くのがちょっと楽になったよね!」 「……部活といえば、武市は何部なんだ?」 武市さんが自ら撒いた地雷を、やっぱり塩田君が踏んでくれるのだった。 嬉しそうに笑っていた彼女の表情は急速に凍え、ちらちらと目線が彷徨う。 「なっ、なっ……何部、にっ、み、見える!?」 ジン先輩であればさらりととっさに返すような問いにも動揺がだだ漏れ。 案外不器用なタイプなのかもしれない。 質問に質問で返しちゃってるし。 しかし良かったのか悪かったのか、塩田君は動揺をスルーして質問だけを真面目に受け止めてしまう。 たっぷり十秒以上は考えた後に、首を傾げながら…… 「……バドミントン?」 間違っていた。 それを聞いた武市さんは急に不敵な笑みを浮かべると、思いついたように口を開く。 「そっか……私バドミントンっぽく見えるんだ!」 そうでもないと思う。 とかなんとか話しているうちに教室に到着したので、その話題は自然とたち消えた。 「うー、なんか緊張するよね。クラスの中殆ど知らない人ばっかだし……」 「だよねー。新しい友達とかできるかなぁ……」 度胸のない女子二人に対して、塩田君は無言でさっさと入っていってしまう。 その広い背中に呆気に取られた私達に気付いてか否か、ちらりと僅かに振り返ると、私に向かってこう言った。 「どうせ俺らは前後の席だろ」 淡泊な言葉。 それに私は不思議とすっきりした気持ちになった。 って、席替えまでの間……背の高い塩田君の後ろなわけ? 私……  
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