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元の世界のことは、マカロフに任せてある。
あいつは頭の切れるヤツだ。
しばらくは、こちらの世界での仕事に集中できそうだった。
しかし、あいつは危険な男だ。
いつ反旗を翻すか分かったもんじゃない。
だが、そのときはヤツを粛清するのみだ。
共産主義に拷問、処刑、粛清は日常茶飯事なのだから……
そして今、作業は最終段階を迎えていた。
ここまで来れたのはやはりキミのお陰だ。
まあ、礼くらいは言っておこう、同志。
それにアイツら……君の子飼いのナンバーズ達から情報が漏れる心配もない。
極秘に行っていたし、打ち合わせさえ、彼女達に気付かれないようにやってきたからな。
きっと、彼女達は俺達の存在すら知らないだろう。
素晴らしい。
実に素晴らしい。
すべてが思惑通りに進んでいた。
男は満足げに煙を吐き出す。
そのとき、耳に付けていたイヤホンから、ロシア語が聞こえてきた。
「同志、時間です。」
もうそんな時間か、と思いながら男は超小型隠しマイクに
「分かった、すぐに行く、同志。」と応えた。
今の会話も、管理局のヤツらが傍受していたとしても、ただのノイズにしか聞こえないだろう。
これも偉大なる同志変態学者の賜物だった。
男は葉巻を捨て、街に向かっていた。
そして男は、超国家主義派の指導者、エフゲニー・ミハイロヴィッチ・カレーリンはクラナガンの街中に吸い込まれるように消えていった。
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