プロローグ 1 悪の胎動

6/6
前へ
/42ページ
次へ
元の世界のことは、マカロフに任せてある。 あいつは頭の切れるヤツだ。 しばらくは、こちらの世界での仕事に集中できそうだった。 しかし、あいつは危険な男だ。 いつ反旗を翻すか分かったもんじゃない。 だが、そのときはヤツを粛清するのみだ。 共産主義に拷問、処刑、粛清は日常茶飯事なのだから…… そして今、作業は最終段階を迎えていた。 ここまで来れたのはやはりキミのお陰だ。 まあ、礼くらいは言っておこう、同志。 それにアイツら……君の子飼いのナンバーズ達から情報が漏れる心配もない。 極秘に行っていたし、打ち合わせさえ、彼女達に気付かれないようにやってきたからな。 きっと、彼女達は俺達の存在すら知らないだろう。 素晴らしい。 実に素晴らしい。 すべてが思惑通りに進んでいた。 男は満足げに煙を吐き出す。 そのとき、耳に付けていたイヤホンから、ロシア語が聞こえてきた。 「同志、時間です。」 もうそんな時間か、と思いながら男は超小型隠しマイクに 「分かった、すぐに行く、同志。」と応えた。 今の会話も、管理局のヤツらが傍受していたとしても、ただのノイズにしか聞こえないだろう。 これも偉大なる同志変態学者の賜物だった。 男は葉巻を捨て、街に向かっていた。 そして男は、超国家主義派の指導者、エフゲニー・ミハイロヴィッチ・カレーリンはクラナガンの街中に吸い込まれるように消えていった。
/42ページ

最初のコメントを投稿しよう!

51人が本棚に入れています
本棚に追加