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学校からの帰り道、いつも通りひとり。
いつも通りの道を、いつも通りの無表情、いつも通りの無関心で歩く。
物事に無関心だということは、周囲に盲目だという事に転ずる。
だから、直前まで気づくはずも無かった――――
――背後から唸りを上げて迫り来る、鋼鉄の巨躯に。
突然の事だった。
バスン、と何かが爆ぜるような音が聞こえた後、視界が傾く。
背後を確認する間もなく、吹き飛ぶ体。皮膚が裂け、体のあちこちが悲鳴を上げる。
衝撃を受けた場所から出た血液が、糸を引いて流れていた。
その血潮は弾けるようにして宙を舞い、やがて地面に垂れ落ちては紅い斑点を形作る。
それも、瞬時に。
――なにが起こった?
そんな当たり前の疑問が脳裏に浮かんだ。
勿論、解明するだけの時間は僕には残されているはずもない。
痛みすらも感じないのだから。
きっと、感じる暇がないから。
僕は夢見心地だ。
衝撃を受けながら、曲がってはいけない方向に曲がってしまった腕が垣間見えた。
その指先、今まさに跳ね飛ばされている方向に僕は厚いコンクリートの壁を見る。
僕の体を弾き飛ばした“何か”は勢いを緩めることなく直進し続けていた。
このままでは巨体と壁に板挟みとなる事は、語るより明白である。
プレス機にかけられるゴミの如く、完膚無きまでに押しつぶされてしまう。
内臓は破裂し、脳は潰れるだろう。
しかし、逃れる為にもがいた手は虚しく空を掴む。
体の重心を投げ出された僕に為すすべはなく、衝突の瞬間ただ――
「ああ、僕は死ぬんだな」
――と何故か分かった。
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