第三章 遡る思い

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「異世界から誰かが来た前例がないのは本当、でも逆ならあるんだ…」 「逆って…、この世界から誰かが異世界に行ったって事?」 「うん、この世でたった一人だけだけどね」 「一人…、どうしてそれを知ってるんだ?」 「その人はアシェリーと組む前にパートナーとして組んでた人なの」 なるほど…、だからもうこの世界にはいなくなってしまった人を名残惜しむかのように、悲しい表情を浮かべていたのだろう。 …いやしかし待てよ、この話からすると俺は元の世界に帰れるのではないだろうか。 「って事は…異世界に行く方法がこの世にあるのか!?」 「残念ながらこの世界にたった一つしかない魔法の石を使わないと異世界への空間は開かないんだ」 「じゃあ…それを探せば!」 「でもその石は私のパートナーだった人が異世界に行った時に砕け散ったからもうこの世にはないんだ…」 俺オワタ。 「…どうしたの、急に遥か遠くを見るような顔をして?」 「いや、この世界でどう生きていこうかしらって思ってただけ」 さて、この変態チキン(モンスター)が普通に生物として出現する世界でどういう人生を過ごしていくか…、計画をたてようかな。 「…所で何でその元パートナーは異世界にわざわざ行ったんだ?」 「行った…じゃなくて追いやられた…かな」 「なんだ、何か悪い事でもしたのか?」 そう発言すると、前方を先に歩いていたアシェリーが鋭い殺気の籠った眼差しで俺を見てきた。 少し苛ついているように見える。 「…彼は、ゼクセルさんは何も悪い事なんかしていない!」 「を…をぉ!?」 「彼は…ゼクセルさんは私の故郷を救ってくれた、それだけじゃない…、貧しい人達のために食事を振舞ったりもしてくれた!」 「お…うん…」 それを俺に言われても…。 「彼は私との約束通り世界を救ってくれた、なのにどこぞの馬鹿がゼクセルさんを化け物扱いしたせいで…!!」 「あぁーはいはいアシェリー落ち着いて、ごめんねシゲル、この子ゼクセルの大ファンで…」 熱く語るアシェリーを、レイが口を塞いでそれを止めた。
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