第三章 遡る思い

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ゼクセルという人物がいなくなった後、モンスターは人間と同じように自己増殖する生き物という事が判明したらしい。 それをきっかけにゼクセルを英雄と崇めるものが大量に続出。 元々ゼクセルという人物に対しての感謝心や尊敬心があった者はたくさんいたそうだ、この場にいるアシェリーのように。 ただ、王都にいる貴族が中心となってゼクセルを化け物扱いしていたため、主にゼクセルを英雄と崇める者の多い小さな村の住民達は、貴族の報復が怖くて何も言えずにいたのだそうだ。 だけど判明したのをきっかけに小さな村の住民同士が団結し合い、貴族の報復を恐れずにゼクセルの指名手配の撤回と、英雄としての称号を渡すように申し出る。 だが…、その時一人の貴族の男がこう言葉をこぼしてしまう、「もういなくなったも同然の化け物の事なぞどうでもいいではないか」と…。 その言葉をきっかけに小さな争いが貴族と小さな村出身の一般の民との間で起きてしまう。 争いはその場にいた人々によって止められはしたが、それをきっかけに大きな争いへと発展する事となる。 ゼクセルを崇める者と、ゼクセルを魔王と認知する者とで分かれ、戦争が勃発。 貴族はゼクセルを崇める者達を魔王軍と呼び、自分達の軍隊を正義軍と名乗っているらしい。 ゼクセルを崇める者達は普通に、ゼクセル派と貴族派で分けている。 一見数の少ない貴族派が不利な戦いに見えるが実はそうでもない、貴族にはそれぞれに屈強な力を持つ大勢の兵隊達がいるのだ。 さらにそれだけではない、小さい村や街が必ずしもゼクセルを崇める者という訳ではなく、貴族の言う事を鵜呑みにしてゼクセルを魔王と思いこんでいる者達も大勢いるそうなのだ。 数ではほぼ互角なのだが、貴族派には戦い慣れした兵隊がいる分、貴族派は少し優勢の立場にいる。 ずっと睨みあいの状態が続いているおかげで、まだ双方とも大きな被害は出ていないそうだ。 「この世界にいる全ての人が敵になった訳じゃなかったのに…、ゼクセルを認めてくれている人達はちゃんといたのに…、それも知らずに早とちりで他の世界に行っちゃうんだもん、ほんと…馬鹿だよね」 レイは説明を終えた後、どこか遠くを見つめるような瞳で悲しげな表情を見せた。
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