第四章 Xを秘めし英雄

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「…寝てる」 「そりゃ寝るのではないですか?」 どこからともなく女性二人の声が聞こえる。 「…何故?」 「ここに来て一番喜んでいたのはシゲルさんですから」 駄目だ…頭がふわふわしてて何も考えられない。 「だからそれが何故?」 「それは彼があまり普段動いたりしないからでしょうね、きっと疲れ果てていたんです」 「…とりあえずそろそろ起こしていいよね」 「そうですね…朝食は取った方がいいですから」 そんな言葉が耳に入ると同時に…。 「えい」 俺の頬に何度も激痛が走った。 「起きろシゲオ、起きろ」 「痛い痛い痛いっ!」 俺の眠気がそれで一発で覚める。 「シゲオ、起きろー」 「シゲオって誰だよ!」 俺はそう叫びながらガバッと起きあがる。 「あ、シゲオが起きた」 俺は目をこすり、声のする方向を見ると、アシェリーが無表情で俺の頬を叩いていただろう手を構えていた。 俺はどうやらアシェリーに往復ビンタをされていたらしい。 アシェリーの隣にはリシルも立っている。 「おはようシゲル」 「おはようございます、シゲルさん」 二人は俺に朝の挨拶をしてきた。 俺は頭を掻きながら、 「もうちょっと普通に起こせないのかね?」 と言った。 「さぁシゲルさん、朝ご飯がもう準備されてますよ」 リシルはいつもの天使スマイルを浮かべ、俺の言葉を無視して部屋から出て行った。 残された俺とアシェリー。 「…折角宿屋の店主がご飯を作ってくれたんだから、食べないと失礼」 「わかってるよ…この食いしん坊が」 俺はそう言いながら体をベッドから起こす。 「あれ…、ていうかアシェリーは寝起き悪くなかったっけ?」 「…お姉ちゃんがいる時は別」 「何で?」 「…言いたくない」 どうやらとんでもない起こされ方を姉のリシルから受けているようだ。 …リシルのイメージが変わるかもしれないので深くは聞かないでおこう。 そしてその後、俺とアシェリーは一緒に食堂へと向かった。
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